人気バーテンダーから葡萄栽培家に!小川徹さんインタビューの序章

様々な分野で活躍されている魅力的な方にお話を伺い、ご紹介させていただく桜桃庵。

第五回目のインタビューでは、山形の葡萄栽培家・小川徹さんにお話を伺いました。

 

 

「本年から高畠町にて、ブドウ専業農家(初級)になりました」というメッセージを小川さんに頂いたのは2016年のこと。

しかし、その内容とご本人のイメージが合致せず、私は目をしばたたかせました。

 

というのも初めてお会いした1999年当時、小川さんは20代ながらショットバーの敏腕マスター。
(私はそのバーで芝居を上演させていただきました。)

機転の利いたウィットに富んだ会話に、洗練された身のこなし…まるで”スマートの塊”のようなバーテンダーだったのです。
カリスマ性もあり、老若男女問わず人気を集めていらっしゃいました。

夜の世界が似合いすぎて、小川さんと土や緑といった大地が結びつかなかったんですね。

 

以来、そのあまりに鮮やかな転身に「ぜひお話を聴いてみたい、どのような志で葡萄を作っていらっしゃるのだろう」と思っていましたが、今回2年越しの願いが叶いました。

「農業的に見どころが多い」と小川さんのおっしゃる9月中旬、山形県の高畠町へ。

小川徹農園にて、取材と農作業をたっぷり体験させていただきました!

 

小川徹(おがわとおる)

1972年8月15日生まれ、山形県米沢市出身。
山形大学人文学部卒業。

ショットバー店長を経て独立、飲食店を経営。
閉店後、農業の道へ。

特技はダーツとギター。
趣味はダム。一押しは綱木川ダム。

 

 

まほろばの里・山形県高畠町の小川徹農園へ!

 

十年ぶりの再会

小川さん、お久しぶりです!この度はよろしくお願いします!

「本当に久しぶり。よく来てくれたね。会うのはいつ以来?」

最後にお会いしたのは小川さんのダーツバー(小川さんはダーツで世界を転戦し何度も優勝してきた腕前)で、10年前になります。当然のことながら…小川さん灼けましたね!細身で色白だったバーテンさんが、これほど精悍な40代になられるとは。

「農業に携わって7年目になるからね。毎日がもう、育てている植物のリズム。」

昔、膝を大怪我して何度か手術もされていますが、脚は大丈夫ですか?

「ああ、靭帯損壊とか膝蓋骨骨折とかね。今でも引き攣りはあるけど、気にしないことにしてる。 畑の柔らかい土は本当に気持ちが良いんだ。歩くと疲れるけど、アスファルトを歩くのとは全然ちがうんだよ。
葡萄を世話していたらオレも頑強になっちゃった!みたいな生活。今が人生で一番良い時期よ。
じゃあさっそく農園を案内しようかな。その前に、はい朝ご飯。」

と差し出されたこの宝石、いや葡萄、かのシャインマスカットではありませんか!

 

 

噂には聞いているシャインマスカットの美味しさ。

しかし実は果物の酸味がかなり苦手な私。

うう葡萄が不得意なまま葡萄園に取材に来てしまった…とおそるおそる口に運んだのですが。

 

えっ、葡萄ってこんなに甘くて美味しい食べ物なんですか!?
パリッ!シャキッ!ジューシー!幸福~♡ってなりますね!!?

「そう?葡萄のイメージが変わって良かったよ(笑)」

 

そんな会話から始まった10年ぶりの再会。

小川さんは若い頃からとても主体性のある言葉で話される方だったので、「今が人生で一番良い時期」と言い切る変わらぬ潔さに、懐かしさを覚えます。

また、心からそうおっしゃているのが解る充実した表情、特に深みをぐんと増した目元がとても印象的で、どんなお話を伺えるのか大いに期待が膨らみました。

 

 

小川徹農園の商品とその特徴

その後、まずは小川さんが軽トラで農園を案内してくださいました。

こちらは生食用のデラウェア(種なし)を栽培されているハウスです。

それにしても葡萄園というのは綺麗なものですね!

 

 

早朝の澄んだ空気、ふかふかの土と草、ほのかに甘い爽やかな香り、美しい緑。

とても良い気候の頃に呼んでいただいたからこそ味わえる贅沢で、厳しい季節が長いのは承知しているのですが、それでも「”heaven”や…」と思ってしまいました。

それに、素人が見ても手入れがよく行き届いているのが分かります。

 

 

農園はここ一ヵ所だけではないのに、お一人でここまで。本当にすごい。

「忙しいわけじゃなくても毎日畑にいるもん。畑が好きなんだよね、オレ。本当に毎日、何かしている。」

 

ハウスの葡萄棚の上の風景がお気に入り、と小川さんが脚立で見せてくださったのがここ。

 

 

涼やかな棚下とはちがい、植物のエネルギーが満ち満ちていて、心身が元気になる思いがしました。

 

それではここで、そんな小川さんが栽培されている品種をご紹介いたします。

「健全に作れるものは健全に作ろう」という考えのもと、小川徹農園の葡萄は減農薬・除草剤不使用(醸造用では一部にのみ使用)です。

では冒頭のシャインマスカットのほかの、生食用の大粒葡萄から。

 

粒が大きく果汁たっぷりの藤稔(ふじみのり)。

 

栽培が難しく希少な高尾。細長い粒に優しい甘みが詰まってる!

 

皮の内側が甘く柔らかいスチューベンは、とろけそうななめらか食感。

 

きゅっと詰まった房と丸い粒、色が美しいナイヤガラ

 

画像はありませんが、ほかにピオーネサマーブラックも栽培されています。

 

こちらは収穫されたデラウェア(奥)とサニールージュ(手前)。

小川さんのデラウェアは、仙台市のGELATI BRIO(ジェラーティ ブリオ)さんによってジェラートにもなっています。

本物のデラウェアをいただいた直後だったので、その風味と香りがそのまま生かされていることに感動!
甘さと酸味のバランスが整っていて、葡萄の美味しさがぎゅっと詰まっていましたよ。

 

これら生食用の葡萄の一部は、Facebookを通して購入することが可能です。
小川徹農園の「葡萄販売のお知らせ」をご覧くださいませ。

 

またワインの醸造用にナイヤガラ・メルロー・デラウェア・ピノグリージョなどを育てられており、今年2018年は宮城県のファットリア アルフィオーレさん、茨城県の牛久シャトーさんに出荷されているそうです。

 

 

小川徹農園にて農作業体験!

ところで、これまでインタビューさせて頂いた方々と自分には何かと共通点がありましたが、私は農業に関して全く知識がありません。

そこで今回はインタビュー前に、二日半の農作業体験をさせていただきましたので、簡単なレポートをお届けいたします。

小川さんの仕事の丁寧さ、真摯さなどが伝わればと思います!

 

1)シャインマスカットの収穫&梱包・発送

私が訪れたのはちょうどシャインマスカットの収穫期。

病害虫対策のため袋が、日焼けによる変色防止のために傘がかけられています。

収穫に適したマスカットを見極めるため、手で重みを測る小川さん。

私もそっと持ち上げてみると、どれもパンパンに実ってずっしりと重く、瑞々しい感触が袋ごしにも伝わってきます。

ここまで育て上げるのに要した手間と労力に思いを馳せずにはいられません。

 

蔓を長く残して摘み、発送の際もそのまま梱包するのが小川さん流。

その水分で瑞々しさをキープするためだそうです。

 

その日の発送分を摘み終えたら、事務所兼作業場に移動して梱包作業を行います。

何度同じ作業をしても、袋から葡萄を取り出す瞬間は毎回とてもドキドキする!

 

梱包も一つ一つ手作業で、大事に包んでいらっしゃいます。

これをさらにフルーツキャップで保護していきます。

ご覧ください、この迫力ある美しさ!

 

専用の箱を組み立てて、バランス良く収めていきます。

これが届いたら幸せになること間違いなしだなあ、と思いつつ。

この段階まで、すべて小川さん一人で行っています。

 

私もお世話になっている方々に、自分で摘み梱包させていただいたマスカットをお送りしました。

とにかく美味しいと好評だった!ギフトにもお勧めです♪

 

 

2)ビニールハウスの撤収作業

食事休憩をはさんだ後は、ハウスの片付けです。

こういった力仕事もどこか楽しそうに行う小川さん。

「時間や体力面で”大変”ではあっても、終われば何か結果がそこに待っているから。作業中にそれを思うと楽しいんだ。」

 

さて私が手伝ったのはハウスとハウスの谷の、高いところに上がっての作業。

作業の手順と目的を伝えられ、「じゃあいってらっしゃい」と脚立で送り出された後はもう必死(笑)

取材どころか与えられた仕事をこなすので精一杯…なところを、逆に園主に撮影されてしまいました。

時間はかかりましたが、「仕事が正確」と褒めてくださり嬉しかった!
農作業は一つ一つの達成感がすごく大きいですね。

この後ネットを折り畳んでいく作業を一緒にしたのですが、ふだんこれをお一人でされているのかと思うと…忍耐強さに頭がさがる思いです。

「毎日の農園で、俺は気にならないんだけど、コツコツ独りの世界で。ピーク時には本当に人と話すことがなくなる孤独な世界。でも目指しているところがあるからタフでいられるんだよ。」

 

 

3)ナイヤガラのお手入れ

ワイナリーの方々がナイヤガラを収穫にいらっしゃる前日、雨などで割れてしまった粒を房からとってあげる作業をしました。

真剣なまなざし。

葡萄と向き合う時はいつもこのまなざしでした。

時に葡萄を褒め、時に自分に悔しがりながら、露地栽培のナイヤガラを様々な角度からチェックしていきます。

この翌日、ワイナリーの方に喜んでいただけたそうです。

さすがですね!

 

二日半ですが、自然の中、身体を使って仕事をした後の疲れは心地良かったです。
何か”正しい営み”に参加させていただいたような気持ち。

暑くても筋肉痛でも、作業が難しくても大変でも、ただひたすらに楽しかったです。

小川さん、貴重な経験をありがとうございました!

 

 

農彩土代表・村越圭太さんとの会食に同席

ところで取材二日目には、小川さんと株式会社農彩土代表・村越圭太さんとの会食にもおじゃまさせていただきました。

農彩土さんは葡萄の生産者とワイナリーの橋渡しをしつつ、より良い環境や条件で葡萄を流通させることに尽力されている会社です。

小川さんは農業を始められた頃より農彩土の先代社長と親交があり、それを「運が良かった。この出会いが指針になった。」とおっしゃいます。

単に栽培するだけではなく、葡萄とワイナリーを取り巻く現状と未来を、真剣に考えていらっしゃるのですね。

 

それにしても、共に頭の回転が非常に速く、シンプルかつ力強く思考されるお二人の会話は、聴いていて本当に面白い!

お二人はすでにビジネスパートナー以上の存在になっているようですが、ここで村越さんに「小川さんはどんな葡萄栽培家ですか?」という、少々漠然とした質問をしてみました。

すると返ってきたのは

「完全に信頼しています。」という一言。

 

葡萄を買う立場の方にそう断言させる小川さんの取り組み方・姿勢…

詳しく聴いてみたい質問が次々に浮かんだところで、いよいよ次回、小川徹さんのインタビュー前編をお届けいたします。

 

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